耳掃除(耳かき)ってしない方が良いの?適切なやり方と頻度とは?

投稿日:2021年7月30日

外来では耳掃除をしすぎて耳が痛くなった、聞こえづらくなったという方が多くいらっしゃいます。最近ではテレワークでノイズキャンセリングのイヤホンで耳が痛くなった方も増えてきました。

耳掃除はなんとなく自己流でやっているという方がほとんどだと思います。専門家の観点から耳掃除の必要性、耳掃除をすることで起こりえる危険と共に、安全に行うための適切なやり方や頻度をご説明します。

耳掃除(耳かき)をする必要はあるのか?

基本的には耳掃除は必要ありません。

学校検診などで耳垢を指摘されて来院される方もいらっしゃいます。
検診では耳垢をとることはできず鼓膜が確認できないため、耳垢を指摘して病院で鼓膜を確認してもらうことが目的なのです。

耳垢とは?溜まりやすい場所は?

耳垢は耳の穴の中にある耳垢を作る腺(汗腺の一種のアポクリン腺)と皮脂腺からの分泌物に、耳の中の皮膚が剥がれ落ちたものや髪の毛、ちりなどが混在して出来た物です。

耳垢の役割は、外耳道と鼓膜の保護・洗浄と言われています。鼓膜、外耳道はいずれも比較的薄い皮膚ですから、耳垢はこれらを覆う事で表面の保護や乾燥防止の役割を持っているといわれています。

耳垢の成分にはリゾチーム・IgA・IgG等が含まれ、抗菌・抗真菌作用を持っています。通常自浄作用で外に排泄されるため、耳の穴に近いところにたまりますが耳掃除で奥に詰めてしまうと、鼓膜に接してしまい。異常な音や聞こえづらさを自覚します。

耳掃除(耳かき)によるリスクとは?

耳掃除はとても気持ちがいいものです。ついやりたくなってしまう気持ちもわかります。しかし、自分で耳の中をみられるわけではないので、耳の中(外耳道)を傷つけてしまうこともしばしばあります。

外耳道は耳の穴から鼓膜までの道です。鼓膜とは薄皮のようなもの(上皮層)でつながっています。耳の中を耳掃除で傷つけてしまう、あるいは耳垢やイヤホンなどで強く伸展すると鼓膜も炎症を起こしてしまいます。

鼓膜よりも奥の中耳まで炎症することはまれですが、鼓膜炎を繰り返し起こすと次第に鼓膜が薄くなっていきます。慢性中耳炎のような鼓膜に穴があいてしまうことは、鼻やのどにも原因がありますが、こうした繰り返す鼓膜炎も原因のひとつです。

綿棒や、竹のみみかきで習慣的にみみかきをしている方は注意が必要です。

耳掃除をする場合のやり方と頻度とは?

どうしてもかゆくて仕方がない、やらないと落ち着かない方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、週に1回程度こっそりやるくらいに留めたほうがよいでしょう。

耳の穴から鼓膜までは約2.5-3㎝ですので、綿棒の先が入るくらいが耳掃除をしてよい範囲です。耳垢は放っておいても自浄作用があり出てきますし、水が入っても多くの場合はそのまま渇きます。気にならなければ、耳の穴の周りをタオルで拭うぐらいがちょうどよいかもしれません。

耳の手術をされた方、ご高齢で補聴器をご使用になる方は3-4か月ごとに耳垢を除去する必要があります。耳掃除をしている間に痛くなった、聞こえが悪くなったなどの症状がある方は耳鼻科への受診をお勧めします。

執筆者:耳鼻咽喉科専門医 石井玄彦

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