鼓膜が傷ついたり、炎症を起こしたりして、一部に穴が開いてしまう病気です。鼓膜穿孔といいますが、耳の聞こえが悪くなったり、耳から液体(耳漏)が出てきたりします。
鼓膜に穴が開いても、まったく聞こえなくなるわけではありません。炎症を繰り返して、次第に難聴が進んでいきます。
綿棒や耳かきなどで鼓膜を傷つけてしまうためです。また、鼓膜の奥の中耳という場所の環境が悪く、炎症を繰り返す場合に起こります。
耳かきの習慣を減らすことや、鼻、耳の環境をよい状態を保つことが重要です。
綿棒や耳かきなどで鼓膜を傷つけたり、平手打ちなど音響によってできた穴は、ばい菌の感染を起こさなければ1週間程度でふさがります。穴が大きかった場合や、感染して炎症がおきてしまった場合は最初より小さくなりますが、自然にふさがるのは難しい可能性があります。
鼓膜に穴があっても聞こえは悪くないケースも少なくありません。そのため、気づかずに治療をせず放置してしまうと、感染を繰り返して耳から液体(耳漏)が出るようになります。また、穴が小さくなる様子がなくなってしまった場合は、そのまま穴が残ります。
耳の聞こえが悪くなる「難聴」や「耳だれ(耳漏)」が主な症状です。重い難聴になる場合は少ないですが、耳だれが何度も出てしまい、さらに聞こえが悪くなったり、枕を汚してしまったりすることがあります。
外傷で起きたものは、治療をしなくても自然に穴がふさがります。ばい菌の感染で起きたものは、飲み薬や点耳薬を使って炎症を抑えます。
そのまま穴がふさがる場合もあります。しかし、耳だれを吸引したり、穴の周りを処置することで、閉鎖を促す場合もあります。それでもふさがらない場合は、穴をまず仮にふさいで聴力検査を行います。
仮に詰め物をして、鼓膜の穴をふさぐことで、聴力が改善するか試してみます。
湿った綿球や薄い紙を使います。穴をふさぐことで聴力が改善する場合は、鼓膜の穴をふさぐ手術の適応になります。一方、穴をふさいでも聴力が改善しない場合は、鼓膜よりも奥に問題があることが予想されます。そのため、さらに高度な手術の適応になります。
鼓膜の穴をふさぐ手術です。穴の周りに傷をつけ、穴の周囲を新鮮な傷にします。
その周囲に人工真皮や、耳の後ろから採取した脂肪や筋膜を張り、鼓膜を再生します。耳の後ろから組織を採取する場合は、耳の後ろを1cm程度切開し、脂肪や筋膜を採取します。
鼓膜の穴にはめ込む、または裏打ちするような形でふさぎ、特殊な糊で接着します。
手術は主に日帰りで手術を行います。通院が困難、遠方の方は入院でも行っております。
点滴で少し眠くなるお薬を使い、局所麻酔で行います。鼓膜表面に麻酔をしたり、局所に麻酔の注射をしたりします。麻酔を含め、1時間以内には終わります。
術後は通院が必要となります。手術を行った週は2~3回程度ご来院いただき、耳の中を処置します。きちんと移植した鼓膜が生着するには大体1か月程度かかります。