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慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは

副鼻腔(蓄膿症)

副鼻腔とは、大きく分けて、おでこにある前頭洞、目の内側にある篩骨洞、篩骨洞のさらに奥に蝶形骨洞、頬の奥にある上顎洞からなり、粘膜からは鼻水が分泌されています。

鼻水の流れがとどこおったり、体調が悪くなったりすると副鼻腔内のばい菌の活動が活発になり、粘り気のある鼻水がたまります。色のついた鼻水がでる、鼻づまり、頭痛、目の奥が重苦しい、顔が痛い、歯が痛い、のどに痰がおりてくるなどのさまざまな症状が起こります。

症状の発症から4週間以内のものは急性副鼻腔炎とされます。数ヶ月に渡って良くなったり悪くなったりするものを慢性副鼻腔炎(蓄膿症)といいます。

副鼻腔炎は風邪や花粉症と同じく、大きな意味では風邪症状ととらえることができますが、特に副鼻腔の炎症が主となるものを副鼻腔炎といいます。花粉症はシーズンが終われば症状はなくなりますが、副鼻腔炎は適切な治療を行わないと、症状が慢性化する場合があるため注意が必要です。また、風邪や花粉症をきっかけに、副鼻腔に炎症が残り、鼻症状がなかなか良くならないという方も多いです。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の原因

副鼻腔(蓄膿症)の原因

慢性副鼻腔炎は、主に、ウィルスの感染やばい菌の感染によって起こります。虫歯や歯周病によっておこるものもあります。

本来、鼻の中にはばい菌が常にありますが、体調や環境の変化によってばい菌の活動が活発になります。普段症状がなくても、急に発症して重い症状になる場合もあります。

また、繊毛運動の活動低下や鼻水の流れがうっ滞しやすい構造になっている方が副鼻腔炎になりやすいです。近年では好酸球性副鼻腔炎というアレルギーに関わる細胞が活発に活動し、副鼻腔炎の再発を繰り返す症例も指摘されています。

副鼻腔炎(蓄膿症)の診断

副鼻腔(蓄膿症)のCT画像

まず、患者様の症状の経過や病歴を問診します。副鼻腔炎が疑われる場合は、頭部レントゲン撮影や副鼻腔CT撮影を行います。また、鼻腔内を内視鏡で確認する場合もあります。

副鼻腔から交通している孔から濃い鼻汁がでていたり、鼻茸(鼻ポリープ)がある場合は、副鼻腔炎を強く疑います。

鼻茸(鼻ポリープ)とは

鼻茸

鼻の中の粘膜が炎症を繰り返すと、ポリープができます。

慢性副鼻腔炎の場合にいっしょにできることが多く、小さな鼻茸は保存的治療で小さくなることもありますが、鼻腔がふさがってしまうような大きな鼻茸は切除を必要とします。

鼻茸の切除のみであれば日帰り手術が可能です。しかし、中等度以上の慢性副鼻腔炎を伴う場合は再発の可能性が高く、侵襲が大きいため入院手術を必要とします。

副鼻腔炎の治療方法

大きく分けて、保存的治療と外科的治療があります。

保存的治療

内服や鼻処置、ネブライザー治療などを行い、外科手術を行わずに治療します。
発症からの時間が短い急性副鼻腔炎の場合は、1週間程度の内服で治りますが、慢性化すると少量の抗生剤を3ヶ月程度内服していただく場合もあります。

なお、少量の抗生剤を長期にわたって投与する場合、副作用が発生する確率は数%と言われており、胃腸障害、肝機能異常、不整脈などが主なもので重篤な副作用はほとんどありません。もし強い副作用がでた場合は、ただちに投薬を中止します。

外科的治療

鼻の中の構造が副鼻腔炎を起こしやすい場合、大きな鼻茸がある症例、薬物治療が無効である症例には手術を行います。

手術は内視鏡を用いて行います。病的な粘膜や副鼻腔にたまった膿を取り除きます。また、副鼻腔炎が再発しないように、出入り口を大きく開放します。

軽症の場合は日帰りで手術を行いますが、複数の副鼻腔へ病変が進展している場合は、1泊から2泊程度の入院を必要とします。

手術方法

内視鏡を用いて、鼻の中を明るくモニターに映して手術を行います。鼻茸の切除や患部の処置を行い、各副鼻腔との交通路を拡大して終了します。終了後は鼻の中にスポンジ状の詰め物をした状態で退院となります。

当院では体温で溶ける詰め物を使用しておりますので、手術後数日間は鼻の詰まった状態ですが、徐々に溶け出して鼻呼吸ができるようになります。ガーゼを抜く作業は行っておりませんが、手術後2週間程度で奥に残った詰め物を取る処置を行います。

手術の流れ

手術をする前の膿がたまったり、ポリープができている副鼻腔は下図のような状態です。

副鼻腔の状態
  • 【手順1】
    鉗子で副鼻腔を隔てている壁を壊したり、狭い部分を広げて鼻水の流れを良くします。

    副鼻腔炎手術流れ1
  • 【手順2】
    ポリープや内部の炎症粘膜はマイクロデブリッターという特殊な機械で除去します。

    副鼻腔炎手術流れ2
  • 【手順3】
    炎症病変、膿などを取り去ることで、各副鼻腔との交通を良好にします。

    副鼻腔炎手術流れ3
  • 【手順4】
    副鼻腔が再び閉塞してしまわないようにスポンジや綿を詰めて終了します。

    副鼻腔炎手術流れ4

手術費用

健康保険が適応されます。

副鼻腔炎のみであれば3割負担で片側約40,000円~70,000円、両側約80,000円~約140,000円程度です。

※並列して別の手術を行い、医療費が高額になる場合には限度額適用認定証が適応になります。1ヶ月あたりの入院時の自己負担額が高額療養費の自己負担限度額までのお支払いになります。

副鼻腔炎のよくある質問

鼻茸とは何ですか?

鼻、副鼻腔が炎症を繰り返し、鼻粘膜がむくんだ状態だといわれています。
慢性炎症の結果、鼻粘膜はきのこのように鼻の中で増殖し、空気の通り道をふさぐと鼻づまりになります。主にアレルギー反応が原因と言われており、近年指摘されている好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)では眼の周りの副鼻腔粘膜から多数の鼻茸が出現し、鼻水の流れをふさいでしまいます。内服や点鼻治療で縮小、改善する場合もありますが、鼻の通り道をふさぐほどの鼻茸は氷山の一角で、副鼻腔の奥に根本がある可能性が高いです。切除を行ったり、鼻茸の母地になっている副鼻腔の炎症病変を取り除いたりします。

アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎は違うのですか?

アレルギー性鼻炎は、主に体質によるものです。
遺伝的な要因に後天的な環境要因が重なって起こります。一年中ある原因ではハウスダスト、ダニなど、季節性のものではスギ、ヒノキ、ブタクサなどが代表的です。アレルギー物質に長く、大量にさらされると感作(かんさ)と言って、対象の物質に対してアレルギー反応を獲得してしまいます。
一方、副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎と似た症状を引き起こす場合もありますが、主にばい菌の活動によるものです。
アレルギー性鼻炎は副鼻腔炎の原因にもなります。アレルギーや副鼻腔内のばい菌の炎症などにより副鼻腔から作られる鼻水の流れが悪くなり、鼻の奥に粘調度の高い鼻水がたまります。また、副鼻腔の粘膜も炎症を繰り返し、むくんできます。あふれ出た鼻水は鼻漏、くしゃみを引き起こし、アレルギー性鼻炎に似た症状になることがありますが、原因はおおきく違います。

慢性副鼻腔炎の手術をした後に、長期間薬を服用すると聞いたのですが、本当ですか?

本当です。
術後1か月程度は手術をしたことによる副鼻腔内の炎症がおきます。病的な粘膜は手術によって除去されますが、正常な粘膜が刺激をうけて一時腫れてしまいます。
しかし、手術後1か月程度経過すると改善し、正常化しますが、正常化を助けるため内服をしていただきます。
この間にばい菌の感染などを起こすと、治癒がさらに遅くなるため、炎症の治療薬や抗生剤を内服していただきます。

蓄膿症で一番辛い症状は舌の奥に鼻水が常に垂れるために放つ異臭ですが、手術するしかないんでしょうか?

まずは手術以外の治療を選択します。
鼻水がのどに流れる症状は後鼻漏と言います。はじめは症状の原因に合わせて、内服や処置などの外来治療から開始します。
後鼻漏の原因は必ずしも副鼻腔炎とは限りません。 アレルギーなどによって鼻とのどの間が腫れてしまい、そこからのどの違和感が持続する場合もあれば、食道や胃の粘液がのどに逆流する逆流性食道炎も原因のひとつです。
こういった場合は鼻の手術をしても改善しません。画像検査や内視鏡検査などで副鼻腔炎と診断されており、外来での治療が困難な場合は手術を検討いたします。

蓄膿症と後鼻漏の違いは何ですか?

蓄膿症は正式には慢性副鼻腔炎と言い、病名です。
後鼻漏とは前述のとおり、鼻水がのどに流れることなどによって起きる症状のことです。

術後に定期的に通院できる時間がありません。手術をせずに、上顎洞穿刺洗浄でも治りますか?

上顎洞穿刺洗浄で改善するものもあります。
副鼻腔は前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞の4か所あります。
歯が炎症して生じる歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)やたまたまばい菌の活動性がつよくなる急性副鼻腔炎の場合は上顎洞を特殊な針で刺し、水を送って内部を洗浄することで改善する可能性はあります。
しかし、慢性化した副鼻腔炎で内服治療が効果ない場合は手術が必要です。最低術後1か月程度は週1回程度の通院が必要です。

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