睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まる無呼吸になったり、もしくは呼吸が浅い・弱いなどの低呼吸になったりすることで、日中の眠気や集中力の低下を訴える病気です。運転されるお仕事の場合は命に関わる事故につながることもあり、早期の対応が必要です。
鼻やのどに睡眠中に呼吸が止まる原因がある場合、閉塞性睡眠時無呼吸症候群とよばれ大きないびきや呼吸が止まっているところを家族やパートナーに指摘されて受診されるケースが多く、また、ご自身で日中の眠気や集中力の低下を訴えて受診されるケースもしばしばあります。
鼻が狭く口呼吸が先行していたり、扁桃腺や舌根が大きく寝るとのどが狭くなったりする場合に起こりやすくなります。肥満体形の方や顎の小さいかたも、閉塞が起こりやすくなります。
それに対し、脳の一部に障害があったり、糖尿病などの代謝疾患があったりする場合には、睡眠中に呼吸が抑制されてしまう中枢性睡眠時無呼吸症候群という病態もあります。
英語ではSleep Apnea Syndromeとなるため、その頭文字を取りSASとも呼ばれており、日本における潜在患者は約300万人ともいわれています。
10秒以上無呼吸や低呼吸が続く状態が1時間に5回以上認められ、日中の眠気や中途覚醒、倦怠感などの症状がある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
ご自身が睡眠時無呼吸症候群かどうか気になる方は、次の7項目の有無を確認してセルフチェックをしてみてください。
3つ以上当てはまる場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、医療機関への受診をお勧めいたします。睡眠時無呼吸症候群は何科を受診すれば良いか分からない方もいらっしゃるかもしれませんが、呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科などで行っています。当院でも診察をしています。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴は次のとおりです。
男女比は2:1程度と言われています。
男性は30歳から60歳以上の働き盛りの方、女性は閉経後の方に有病率が高いと言われています。重症の方は男女ともに60歳以上に多くみられます。
肥満体形の方が多い傾向にありますが、瘦せている体形の方でも顎の小ささや、歯並びなどで気道が狭くなる症例もあります。
他に、首が短い、首が太い、まわりに脂肪がついている。下顎が小さい、小顔、下顎が後方に引っ込んでいる。歯並びが悪い、舌や舌の付け根が大きい。などがあります。
(参照:日本内科学会雑誌109巻6号)
睡眠時に呼吸が止まると、体は酸素が欠乏してしまい激しく心臓が動きます。すぐに呼吸は再開しますが、心臓は強く動いたままなので、血圧が一気に上昇します。
日中は血圧が正常の方でも、次第に高い血圧に耐えうるため動脈硬化が進行します。日中の血圧も上昇するため内科的な治療をせざるを得ません。
また、日中の眠気は大きな事故につながる可能性もあります。運転中に強い眠気に襲われる方、日常的に運転に係わる仕事に従事される方は要注意です。実際に、睡眠時無呼吸症候群を背景とした交通事故は多数確認されているといわれております。
よくある症状としては、次のようなものが挙げられます。
原因としては、病態ごとに次のようなものが挙げられます。
検査方法と検査内容は次のとおりです。
① ESS問診票
全項目の合計点を算出し、下記の表を参考に程度を評価します。
0~5 | 日中の眠気少ない |
---|---|
6~10 | 日中軽度の眠気あり |
11~ | 日中の強い眠気あり |
(Johns MW: A new method for measuring daytime sleepiness; The Epworth sleepiness scale. Sleep 14: 540-545, 1991より引用改変)
② 簡易検査
ご自身で検査機械をお持ち帰りいただき、ご装着いただく検査です。
鼻からの呼吸、体位、胸の動き、酸素飽和度などを測定します。脳波や心電図などは測定することができず、中枢性睡眠時無呼吸症候群の診断は十分にできません。そのため簡易検査と呼ばれています。
③ 精密検査
鼻や口の呼吸や、眼や顔の筋電図、脳波、心電図、胸の動き、酸素飽和度を測定して検査します。多くの電極や、装置を取り付けるため入院による検査を行うことが多いです。
中等症から重症と判断された場合は、主にCPAPという機械を装着して寝ていただきます。
しかし、CPAPを使用したからといって、装着していないときに無呼吸が改善するわけではありません。その間に減量したり、扁桃肥大や、鼻腔の狭小化にたいしての手術を行ったりする場合もあります。CPAPは寝るときに鼻にマスクをして呼吸をアシストします。
舌の根っこや口蓋垂(のどちんこ)が原因で睡眠時無呼吸症候群が起きている場合は、横向きに寝ることで無呼吸が抑制されます。抱き枕を使用したり、角度の変えられるベッドを使用したりすることで気道の閉塞を防ぐ方法もあります。
減量も有効です。首回りの脂肪の厚みが増すとともに、咽頭部も狭くなります。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算し、25以上は肥満となります。BMIを指標として適正な体重を目指します。
重症の場合はCPAPというマスクをつけて寝ることで、呼吸の停止を防ぎます。しかし、毎日マスクを使用することを苦痛と感じてしまう人もいます。鼻の中がもともと狭いひとや蓄膿症(副鼻腔炎)などに罹患している方は呼吸が苦しく、長期の装着が困難になる場合もあります。
内服や点鼻治療で改善しない鼻づまりや蓄膿症(副鼻腔炎)をお持ちの方に対して、鼻中隔矯正術や下鼻甲介の切除術、内視鏡下副鼻腔手術をおこないます。
いびきは手術によって改善しますが、無呼吸そのものは改善しません。マスクの装着が楽になり治療を継続することができます。